寒じめほうれん草が旬を迎え、とても美味しく仕上がっています。

2010年1月18日 10:44

ほうれん草は健康野菜、パワー野菜。

ポパイがほうれん草の缶詰をぱくっと食べると、彼のアンバランスな太さの腕の筋肉にはてかりマークが入った。危機一髪のオリーブはポパイに今日も助けられる。

 

前腕が妙に太いのは、ロープを手繰り寄せるセーラーマンの職業が繁栄されているのだ。

 

ほうれん草の旬はいつか?年中ある野菜だから意外と知られていない。少なくても暑い時期の作物ではない。ほうれん草を購入する理由は、健康にいいから、とか安くて購入しやすいといった理由がほとんど。美味しいほうれん草の味を知っている人は少ない。

栄養大学の偉い先生が、種を自家採取し品種改良されていないほうれん草を偶然田舎で食べて、本当のほうれん草の味を思い出した、と語っていた。

 

経験上、健康にいいから、という理由だけで野菜を選んでいると、美味しい野菜にはめぐり会う確立は低い。

 

岩手県は冷涼な気候、夏季ほうれん草の生産地でもある。冬季の農作物生産は限られていて、冬の産直に行くと、大根とか白菜、ねぎ程度しか置いていない。輸入物のドライ・フルーツが陳列されているとますます寒くなる。

 

そんな岩手県の東北農業研究センターで寒じめほうれん草は生まれた。品種ではなく栽培技術。ハウスの中である程度の丈まで成長させ、その後寒気にさらす。寒さを感じたほうれん草は、自分を守るために葉っぱを地面につけ、そして縮ぢれる。匍匐前進、そんな言葉があてはまる。そして水分を体外に出し、内部には糖やビタミンCを蓄積し始める。芯の部分が赤くなるのは、ファイト!の証のアントシアニンである。

 

 

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寒じめほうれん草は甘い。基準は糖度「8」だが、10を越す事がある事実からもかなり甘い。甘さが美味しい野菜を規定するわけではないが、もともと糖質が多い野菜は別として、栽培法の変化で糖質が増す野菜は甘さ以外の美味しさを兼ね備えていることが多い。水を抑えたり、じっくり寒さのなかで育った野菜は美味しい。

 

逆に甘やかして、肥料や水や気温や太陽をたっぷり与えた野菜は大味で美味しくない。人にもある意味同じことが言える。

 

その寒じめほうれん草、根っこにセンサーがあるらしい。地温がマイナスになると「よっしゃー」と体内に糖分やビタミンCを蓄えるのだ。写真のごとく雑草は枯れてもほうれん草は青々としている。強い!逞しい!素敵!

 

 

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そんな寒じめほうれん草にほれ込んだのが生産者の川平さん。好きだから栽培している、美味しいからもっといいほうれん草を作りたい、熱意を語る。もと漁師さんだけあって根性の質がカラットしているのだ。えーい、自然相手の農業。あたりはずれあって当然!でも今年はまだちょっとの所だなぁ、男らしい。寒じめのイメージにぴったりだ。

 

 

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食べてみろぉ、と差し出された葉っぱはえぐみの無いすっきりした甘さ。

舐めてみろぉ、の根っこの切りくちからは糖質たっぷりの汁がにじみ出ていた。

 

 

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その美味しさは科学的に検証したばかりだ。

味香り戦略研究所に分析を依頼する。美味しさは糖質(Brix)、苦味、旨み、先味、後味で比較する。味香り研究所は独自に開発されたセンサーを利用、センサーの膜を通過して味の情報を電気信号に変える。客観的かつ公平な味の判断。もちろん美味しさには視覚、嗅覚、環境なども影響されるが、そういった主観が入らないこともデータ分析に信頼性がます。

 

ほうれん草の「美味しい」は糖度と旨み、そしてほんのりクリアな苦味。下記の座標軸となっている。

 

 

寒じめほうれん草グラフ


美味しさ座標軸右上にプロットされているのは岩手久慈産の寒じめほうれんそう。他県のほうれん草とは比較にならないほどのハイレベルの美味しさなのだ。しかも分析時期はまだ完全に寒じめがされていない時期だったが・・・ということは今の時期・・・・。スケール・アウトかもしれない。

 

ここが「嫌い」のひとつに「えぐみ」がある。下記のグラフでは苦味雑感/食に反映されているが、寒じめほうれん草はかなり少ない事がわかる。子供が美味しいと言うのも納得がいく。寒じめ技術でシュウ酸が少なくなるという報告はあったが、なぜ「えぐみ」が少なくなるかは、まだ一定の見解が得られていない。

 

 

寒じめほうれん草レーダーチャート①


同じ品目でも品種、技術、地域などでさまざまに変化する農産物。

 

「美味しい野菜はどこで売っていますか?」とよく聞かれる。答えるのは難しい。

少なくても外見重視の流通形態では、自ら追求しない限り、美味しい野菜にめぐり会う機会は少ないようだ

 

「先日縮んだ形のほうれん草を料理しましたが、特別美味しくなかったですよ」・・・そう言われてはっと気づくことがあった。・・・・・次回。

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