大鰐温泉もやしとチーズとワイン

2012年3月26日 0:00

物語りというものは語りつぐ人があってこそ。語りつがれなければ、その事実のみの

記録しか残らない。物語には始まりがある。



前回のブログで生産者山崎さんの圃場の様子を紹介した。その山崎さんと岩シェフ、ソフトで真摯なムードがとても似ている。繊細な日本人感性で作り上げる食材とお料理、ジャンルは何であれ、日本の食はすばらしい。
http://yasaioh.shopdb.jp/2012/03/blog-post_11.html







岩シェフ:毎回、私のわがままに提案する食材を、さまざまなお料理に織り込み、そのたびに多くの感動を残してくださるかた。最近は背後に「神」を感じます。



大鰐温泉もやしの説明をさせていただいた。もやしは安いというイメージ、それは今日をもって払拭。大鰐温泉もやしは高級食材。という、私なりの物語の「筋書き再構成」



今月のワイン会のテーマ食材は大鰐温泉もやしと熊本産岩のり



まずは、ゼッポリーネと大鰐温泉もやしのカッペリーニ

細長い大鰐温泉もやしを細いパスタのように扱い冷菜に。会場から「ほぅ、へぇ」という声があがります。そのお隣はピザ生地に海苔をねりこんで揚げたお料理です。日本テイスト。



熊本産岩のりと島根「天領米」のリゾット



天領米は気候の変化を利用して栽培したお米だそうです。チーズと海苔と炭水化物は良く合います。



ほたてと黒鯛のファゴット



これはレベルが高いお料理です。帆立と黒鯛をワンタン状の薄皮で包み込んだもの。それに大鰐温泉もやしのソテー・チーズソースが添えられています。



ホエー豚と温泉もやしのインヴォルティーニ



ソバもやしを豚肉で巻きこんでいます。付け合せのお野菜が肉の風味を高めます。もやしのチジミ風も細長く切ってそえられていて、隅々まで繊細。がさつな言い方をすれば野菜も調味料だし、お肉も野菜の調味料です。赤ワインがしみてきます。



チーズを3種(硬質チーズ・生チーズ・ブルー)

石見銀山天領米のブランマンジェ




ワインは

サンクゼール、高坂リンゴシードル2010「原産地:長野県、飯網町」

日本で唯一中国から伝来した高坂林檎シードルを使用。絶滅しそうになったこのリンゴ。農家さんが残したたった1本のリンゴの樹を接木して、なんとか継続栽培にこぎつけ、こうしてシードルへと開花したこのお酒、ノルマンディのシードル以上の評価を得ているそう。そいうえばモン・サン・ミッシェルを訪れた時飲んだシードルの味が・・・・と勝手にこじつけて・・。



マンズワイン、龍眼スパークリング「原産地:長野県、小諸市」

グレイスワイン・グレイス甲州・茅ヶ岳2009「原産地:山梨県、北社市」

アルプス、長野県原産地呼称認定・ミュゼットヴァン・シャルドネ2010「原産地:長野県各地」

井筒ワイン、長野県原産地呼称認定・マスカット・ベリーA2011「原産地:長野県、塩尻市」


シャトー・クレール・ミロン2008「原産地:フランス、ボルドー地方、メドック地区、ポイヤック村」



今日のトピックスワイン

安曇野ワイナリー、縁結び愛すワイン2011「原産地:長野県千曲市、島根県雲南市」

縁結びワインだそう。千曲市のあんずと島根県雲南ワインのすももからつくられたそうですが、このようなものがなくても結ばれるときは邪魔がはいっても結ばれます。



さて温泉もやし、山形県米沢にも生産地がありますが、こちらはかなりの人気商品、なのに、なのに、後継者がおらず「絶滅危惧種」。



日本食の世界遺産登録が進められているそうだが、日本食の定義はおろか、食材の自給率は41%、しかも、こういったすばらしい伝統野菜の生産がかなり危うい。



どんな料理であっても食材が日本オリジナルであれば天ぷらだろうが鮨だろうが、イタリアンだろうが、日本食と言ってしまっても過言ではないような気がする。



世界遺産登録の前にするべきこと、それは日本の伝統野菜の原産地呼称認定制度である。種の問題、後継者の問題、皆で議論し保護し育てていく共通の場が必要である。



ホンネを言えば、農水省の自給率向上だの米消費促進だの、大手広告代理店に丸投げなのですよ!



食文化は「人」が創るもの。「人」を見誤っているようです.



この会場の年齢層、そして幸せそうな笑顔。これが日本の食文化をけん引するのです。語りつぐ人々はこの方々なのです。



粋なご婦人。パリでもローマでもニューヨークでもニューデリーでも溶け込みます。


ラベル:

大鰐温泉もやし・・「もやし」と呼ぶにはあまりにも洗練された食材

2012年3月11日 20:20


大鰐温泉もやしの収穫シーンが見たい、その時間は朝6時から7時、これまでの経験からしても生産現場はわかりにくい、早朝に現場に向かっても、もしも、もしも圃場が見つけられなかったら場所を尋ねるヒトもいない、コンビの店員さんの情報もあてにならない・・・。ということで前日入りした。



圃場は温泉街の山の中腹にある。前の日に場所を確認。



生産者の山崎光司さんご夫婦。



温泉水のパイプが地下にありほんのり暖かい。シートを外すと美しいうす黄色いもやしが・・。しかし、もやしという範疇では無く、土から栄養を吸収し育つ大豆・そばのスプラウト野菜。芸術的で美しい。茎の部分の透明感がとても良い。



最近のご時世、もやしは40-50円のチープな直材のイメージがあるが、遺伝子組み換え種を使用しているのを人々は知らない。しかしこちらは全て自家採取。夏の時期は種の採取で忙しいそうだ。



どんどん掘り起こすように収穫していく。



ソバのもやし、「階上早生(はしかみわせ)」という品種をタネにして作る。

種のモミの部分が残る。これを取り除くのを人々は面倒というそうだ。美味しいものをつくるには下ごしらえが必要なのは当然。



しかし美しい。これは「もやし」ではない。土からの栄養素をきっちり吸収している。水でぶよぶよの袋いりもやしとは違う。なにより工場では無い、畑で人がつくった食べ物。それだけで有り難い。



大豆のもやし。子葉の部分が実はかなり味わい深い。大鰐町の在来種である豆「小八豆」を使用し、350年以上も前から栽培、江戸時代には、冬の味覚として津軽藩主に献上されたという事だ。




根の土は温泉水で洗い流す。奥さまの仕事。湯気の感じが野沢菜を洗っているシーンを思い出す。



帰宅して料理。いつもの野菜と豚肉の蒸し焼きだが、家族が絶賛。このもやし、すんごく美味しい。本当にもやしなの?蒸し鍋の底に残った蒸し汁をおじやにして間食。



サイドメニューは豆のもやしと豆苗とシメジの酢の物。それに道の駅で購入した豆腐の味噌漬けを加えました。これも洗練された味になります。



高級食材としての大鰐温泉もやし、一度は食べる価値あり、です。



歴史ある作物には続く理由が必ずあります。それは大切な物語、こちらがあれば売れる仕組みもできてきますね。

ラベル:

マッシュルームとハプニング

2012年3月4日 8:15

今月のワイン会テーマ食材は徳島産マッシュルーム

http://yasaioh.shopdb.jp/2012/01/blog-post_08.html


ハプニングというものは避けて通りたいことは山々だが、一定確立で起こることになっているらしい。私の場合目の前で人が倒れるというケースだ。関わりたくないこともあるが、自分は医師であると自己紹介で始まったこのワイン会・・・参加者の平均年齢は高い・・。



それにしてもお料理のレベルが高い。








徳島産マッシュルームの前菜4

生で、フリッターにして、パイ包で、オーブン焼きで・・こうして頂くとマッシュルームって控えめなキノコだと思う。ほかのキノコではここまで上品にいかない。



伊勢芋とマッシュルームのスープ

マッシュルームのうま味成分のシンプルなスープに揚げた伊勢芋がコクをプラス。これだけだと枯れたメニューだが、半生のマッシュルームが躍動感とフレッシュ感を与えている。





魚介類のソーセージ仕立て

みかけよりずっと美味しい。男性が好きな味。スパイシー。



信州上田地鶏「真田丸」のデュクセル焼き

柔らかくさっぱりと脂が抜けていてソースはちょっと濃いめ。周りの野菜付け合せが味の統率役に。



チーズを三種(カマンベール、カマンブルー、粕漬けチーズ)




チャンドラ・ポメロと生チーズのムース

かんきつ類のチャンドラ・ポメロがちょこっと。



ワインは前半清純派、後半は成熟派とマスターソムリエから説明



GAZELA[原産地:ポルトガルブラガ周辺]



あづみアップル、長野県原産地呼称認定・ソーヴィニオン・ブラン・ドゥジエンム2009[原産地:長野県、池田町]



安曇野ワイナリー、シャルドネ・バレルファーメンテーション2010[原産地:長野県、高山村]

アルプス、原産地呼称認定・ミュゼドヴァン・ブラッククイーン2009[原産地:長野県、松本市]

ブルゴーニュ・コート・ド・ニュイ・ヴイラージュ・ベルトラン・アンブロワ2002[原産地:フランス、ブルゴーニュ地方]



井筒ワイン、長野県原産地呼称認定・メルロー樽熟・スープリム2009[原産地:長野県、塩尻市]

メルローを注ぐときマスターソムリエは「メルローが好きな人は頑固でひとのいう事を聞かない」と私に必ず言う。うるさいなー。


安曇野ワイナリー、長野県原産地呼称認定・雅木花2010[原産地:長野県、長和町


宴も終盤、さて帰りましょう・・・というところで「人が倒れた」「先生!」と呼ばれる。条件反射的に駆けつける。ご高齢の婦人がふらふらして立ち上がろうとして、そして再度転倒。この時点で(頭を打った時点で)「これは救急車だ・・」と要請を依頼する。意識朦朧、脈の触知も微弱で冷や汗びっしょり。ところがしばらくして大丈夫だとトイレに立とうとする。抱えてトイレの介助・・・ふう。しかし顔面蒼白だ。


ところが救急車が到着するとその方はしゃきっとして「大丈夫、救急車乗らない、絶対乗らない」の一点張り・・・それもちょっと困る。帰宅途中、帰宅後、なにかあったら誰が責任とるの?関わるべきではなかった。



ともかく高齢もリスク。その上で注がれたワインを飲み干すかどうかご自身で選択していただきたい。



スッカリ酔いが醒めて、次のお店で飲みなおしたのです。