じゃじゃ麺:その不思議な食べ物

2012年4月5日 21:28

高校生から盛岡へ転入し、食べ物では度肝を抜かれることが多々あった。



麺、である。冷麺、じゃじゃ麺、わんこそば。すべてが不思議だった。



なかでもこのじゃじゃ麺。女子高生には少々きつかったが、ボーイフレンドに連れていかれて楽しい思い出と言えば、まあ、そうなのだが。



県庁近くの桜山神社前、そのたたずまいは変わりない。明日は子供が自分と同じ高校へ入学する。試着した制服が昔の自分に重なる。何気なく通りかかったので、なにげなく入店する。



そういえばディスティネーション・キャンペーンで吉永小百合さんが食しているシーンが放映されている。あの光景、財布にはカードなど入っていなくて、一万円と千円札が数枚で飲みに出るムードこそ、盛岡のオヤジ呑み文化に共通。これが実に温かで心地良い。



決して美味しい麺では無い。しかし10年ぶりくらいにこの店を訪れて、過去のシーンがよみがえってくる。



お気に入りの人とくれば、サイズは小。気乗りしない相手とくれば、サイズは大。匂いを気にしなければ、すりおろしニンニクをたっぷりいれて黙々と食べる。



そして仕上げのチータン(卵スープ)。かなり野蛮なメニューだと思う。なにしろ麺を食べ終わったあとに目の前の生卵を割って自分でかき混ぜ、それをお店の人に手渡し、スープと追加ミソを入れてもらう。濃い味が好みなら「ミソたっぷり」という。ネギが苦手なら追加スライスネギの投入を断ることもできる。



美味しい?思わない。明日は食べに来ない、1か月先も食べに来ない。でも1年経ったら解らない。もしお店が無くなると聞けばたいそう残念に思うだろう。



盛岡で暮らしてきたんだなぁ。なんだか不思議な気持ちになる。今度は子供と一緒に来てみよう。さっきからボーイフレンドがそのまま浮かび上がってくる。じゃじゃ麺と今朝の子供の制服姿が当時の私の気持ちにさせているのか。



席の後方にじゃじゃ麺は初めての方2名。私が会計して出ていく姿をめずらしそうに眺めていた。思わず「美味しいわけではないのよ」そう言いたかった。「美味しいわけではないけどね、また食べたくなるの」。



思い出した。ボーイフレンドが「三回以上たべないと好きにならないよ」、最初にそう話していた。あの人はいまどこにいるのかなぁ。

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