安全寺という地域

2010年1月31日 14:12

野菜王に導かれたのか。人との出会いは偶然か?

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男鹿半島に安全寺という地名がある。ナビにも掲載されている。いったいどんな場所なのか。

安全というニュアンス、寺という神社仏閣系の癒しのムードが相まって、さてどんな場所かと空想は膨らむ。寺は「駆け込み」などのレスキューのイメージがあるし、神社であれば祈願系、交通安全祈願の地域・・・だけど、寺?右手に冬の日本海のダークな海外線を横目にしながら頭の中は脈絡の無い空想でぐるぐるしている。

安心と安全は昨今の食の課題。

偽造を見抜くとか消費者センターだとか、食品安全委員会だとか、つねに危うく信用できない世界、というのが前提となっているような気がする・・・ちょっとせちがない。

 

古来、胡椒のとりひきに砂が混ぜられていたとか、所詮、利益追従だとプライドなんか二の次かもしれない。

 

安心は気持ちの問題だから100%の安心はある。

安全は確率であるから100%の安全は存在しない。

 

お会いした農家さんは、とってもこころ優しいおかあさん。おかあさんの畑は冬の寒さでもじっくりゆっくり育つ、やわらかな食感と味の「葉やさい」さん達。その場でつまんで食して「おいしい~っ」。おかあさんと畑に立つと、ルンルン・ふわふわ心弾んで、子供の頃にもどったよう。自分のおかあさんと過ごす安心の時間、そんなときもあった。


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しかし、この畑脇に道路が出来たとたん、農作物を無断でもっていく不届き物がいると聞いた。おかあさんは笑って話しているが、立派な犯罪である。その点では安心、安全では無い。また頭の中がぐるぐるする。おまわりさん、地域の安全よろしくお願いします。

 

おうちに案内していただいて、お手製のおやきをご馳走になる。あったかくて甘くって、同行のかたと二人が子供で、おかあさんにおやつをもらっているようなムードだ。


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そして「なた漬けのナタ」は立派な調理器具なのです。怖くないこわくない。

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おじいちゃんが安全寺の地名を解説してくれた。盗賊の目に付かないひっそりと小さな集落。安全地域とか安全地帯の地名にすると、人々が安住の地を求めて殺到してくる。寺ならそんなイメージは生じない、というのが理由との事だ。安全という地名にこだわるのは、信仰とか願い、祈りみたいなものが込められているのだろう。

 

おうちの柱に張ってあったお孫さんあるいは曾孫さんのスナップ写真。おかあさんもおじいちゃんも、このお家も、きっとみんなの安全寺なんだと思う。

 

後日、今回訪問時撮影した写真をお送りした。おかあさんは以前たばこの葉の栽培をしていた。メロンや野菜の栽培に切り替えたものの、未来に対して少々不安を感じているとお話ししていた。しかし写真のお礼を綴った手紙には、そんな不安など感じさせず、生きていく希望に満ち溢れていた。

 

おいしいものを作っていることによって、それを理解して下さる方々が、必ずいらっしゃるという事、確実に感じました。(原文のまま)

 

野菜王・・・・脳裏をよぎった。きっと何処かに野菜王はいる。

 

 

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五城目朝市で見たものは・・・

2010年1月29日 23:51

今日は五城目朝市!


地域の暮らしが映し出される朝市を訪れると、人の生業(なりわい)を思う。並べられた野菜たちは人々の生活の一部でもある。

まずはセリの確認。おっあった!真っ白で長い根。美しい。きれいで豊富な水で栽培されているのだろう。

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朝市に何を求めるか?

私は「人」。朝市に美味しい野菜のある確立は高くない。たまにユニークなものはあるが、種を自家採種している人はごく希なので、地野菜といってもその遺伝情報は世界中から寄せ集めたようなものが多い。でもたまにほとんど交配されていない純な野菜が残っている事があり、そんな宝物さがしに駆り立てられる。行きたい朝市のある土地での仕事があれば、率先して手を上げる。


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五城目朝市は500年続く歴史ある朝市。杉木材で賑ったこの地域は、建物を見るとかつての繁栄の様子が伺える。郊外の大型ショッピングセンターとのちょっと切ないコントラストは、なにも五城目朝市に限ったことではない。


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朝市の存在意義はお金を稼ぐことではない。出店者の方々の生活の一部であり、お互いの生存を確認しあう場所のような気がする。すこし曲った腰もごく自然。笑顔が素敵。説明は上手だが、売ろうという気概がないのでこちらの気持ちも楽になる。平均年齢は高い。しかしちょっと失礼な言い方になってしまうが、皆さん「かわいい」「愛らしい」。秋田美人、いやいやここではお多福さんがすっぽり重なる。


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商品は売るためのディスブレイになっていない。ごらんの通り、わかめは1本でも買えそうな雰囲気だ。

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きのこ専門店はかなりのマニアでなければ買おうとは思わないのでは。何しろ水煮塩漬けで原型をとどめておらず、しかも方言での名称表記なので、外見と味が結びつかない。

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山イモ系の品種の多さに驚く。滋養強壮食品。これまでもいろいろ食べ比べたが、水分、含有する炭水化物の量、粘り成分、にがみなどを熟知した上で料理が必要である。なかでも自然薯。ちょっと巻き具合が足りないようだが、大きいものほど美味しい、というのが経験。麦ご飯に摩り下ろした自然薯をちょっとずつかき混ぜる。熱いご飯の熱で自然薯の炭水化物成分にちょっぴり熱による化学変化を起こさせてから食べるのが一番。この手のねばねばメニューは美しい姿で食すのは難易度が高い。背筋をのばす、ごはん食文化で大切なこと。


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朝市の出店者の高齢化。こうして生産し価値を生み出すことは、消費するだけの人生では得られない「生きがい」が得られるはずだ。来客者と懸命にコミュニケーションする姿に「五城目朝市でのそれぞれの役割」を感じた。マルシェでもなくファーマーズ・マーケットでもなく朝市。それは受け継がれる文化。

 

雨が落ちてきた。男鹿半島の農家さんに会う予定・・・・。蒸したサツマイモをほおばる同行の方の袖をつまんで車に急ぐ。

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秋田美人は真実・・・・

2010年1月28日 0:19

手紙が届いた。
宛名の文字に見覚えが無かった。ところで差出人は・・・・
あぁ12月中旬に訪問した秋田の方からだった。

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今頃秋田は雪が積もっているのかしら・・。

 

やり取りはメールか、あるいは封書であってもワープロ記入の昨今、お人柄がにじみ出る文字で綴られた手紙は、胸がジンとあつくなる。

 

思い出す・・秋田。人々とのふれあい・・。

 

秋田には知り合いが沢山いる。一般にお米の美味しい場所は、水がきれい、野菜がきれい。そして秋田美人は特筆もの。人体の60%は水で出来ている。野菜の90%以上は水で出来ている。


きれいなものを食べれば綺麗になる。きれいなものはキレイな場所で作られる。


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綺麗な人が沢山いる秋田。綺麗のDNAをきれいな場所で磨いている。

 

秋田市内の「お多福」で一杯。


余計なものがない。素材で食べる。素材が美味しい。

 

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漬物が特別。化学調味料の味がしない。長い冬を暮らす先人の知恵。名物「いぶりがっこ」はいわば野菜のスモーク。大根は定番だが人参もいける。これがまた日本酒に合う。長老喜(ちょろぎ)は貝を思わせるユニークな形。

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ナタ漬けは粕の甘さに包まれているが、マイルドな味は「切れの悪いナタ」にある。シャープに切れると大根の細胞壁が切れる。そうすると大根の辛味成分が空気にふれてどんどん変化する。切れないナタは細胞壁をつぶすように切る。細胞壁にほどよく亀裂が入り、味がじっくり染み込む。さらに人の口のなかで咀嚼されて唾液に少し消化されながら、一つの味の宇宙が広がる。すべて異なるそれそれの瞬間の味。

唾液がジュッと出たところで日本酒を。

 

驚いたり喜んだり怒ったりしながら過ごした金曜の秋田の夜。

カウンター左手で見守っていたのは、お多福さんだった。

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「お多福さんはお母さんといって昔は五徳の美人だったそうです」からはじまる文章。先代の女将が掲げた美人の概念であるそう。

 

ひろいおでこは「おおらかさ」

たかいほっぺ「包容力」

見開かない目「やさしさ」

口もと「性格がわかるくらいに、微笑をたたえていなければならない」

低い鼻「謙虚」つまり天狗の逆

そして最後に結んだ文章。

私は鏡の上にお多福さんの面をおいて鏡をみるたびに今日も一日お多福さんのように美しく生きようと祈っています。

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そうか・・・自信がなくなる。私の外見はお多福さんと対局の顔をしている。「アンチエイジング医学で綴るビューティフル・ライフ」なんてタイトルで講演していたが、科学的な美の説明では限界を感じていた。お多福さん、ありがとう。

そんな話をお店のご主人としながら頂いたメニュー。

 

名物ハタハタ。塩焼きにしたハタハタの内臓には卵がずっしり。そしてこの時期(12月中旬)粘る。野菜の粘りとは強さが違う。恐竜映画で卵から孵化するシーンを連想させる。好みがあるので苦手な人はあらかじめお店の方にご相談を。


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きりたんぽ鍋。うるち米の粒粒が残るお手製きりたんぽは市販の練り物とは味も食感も異なる。ゴボウと鶏肉と舞茸の風味が「あ~日本人の好きな取り合わせ」。注目はのっかった根っこ。せり根である。私も昨年から健康食材として注目していたが、宮城や岩手のせりと根が違う。細くて白いのだ。


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「根を歯ブラシでごしごし洗うのが大変なんですよね」との私の発言に、ご主人

「え~皆そういうんだけど、そんな事ないよ!」

うーん、納得がいかない。明日は五城目朝市へ行く予定。

まずはこの目で確認だ!

 

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果物と幼なじみ

2010年1月26日 13:02

果物の消費が低迷している。

 

先日訪れた九州。庭先にごく普通に柑橘類があり、それぞれが適度に完成されていた。

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茶の間のテーブルにはいつでもみかん

何かほっとずるものがある。かんきつ類は沢山の種類があるが、手で簡単に皮を剥けて食べられる温州みかんは嬉しい。

 

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自家消費用の桃の樹。売り物ではないから、あまり手をかけないので、形はいびつだし、甘さもほどほどのものが多い。光合成担当の葉っぱに対して果実の数が多ければそれだけ甘さも低下する。でも食べてみるとこれも美味しい。生ハムとの相性もかえってこちらのほうがよろしい。

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高級フルーツ店のぶどう。

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とにかく日本の果物は芸術的。

 

日本では果物はどちらかと言うとデザート扱い、外国では食事の一部である。いろいろな食と健康の疫学調査はあるが、生活習慣病・ガンへの果物摂取の予防効果については「期待できる」という報告は多い。しかし日本で果物消費量は総じて少ない。若者世代が食べていない。

 

ではいったい果物をどれくらい食べればよいのか。日本人の食事摂取基準は1日果物皮なしで150-200g、食事バランスガイドでは1日2SV(みかん1個1SV、リンゴ半分1SV)とされている。

 

リンゴに焦点をしぼれば、日本のリンゴは大きすぎる。甘さ重視だから蜜入りとかフジの系列が多く、大きくて皮がかたい。手軽に丸かじりできないし、皮をむいて二人で分けて食べる、なんて事はライフスタイルにそぐわないのだ。外国でスーパーマーケットを訪れると、小さくて甘くないリンゴが安価で売られている。

 

1日1個のリンゴは医者を遠ざける、という諺は有名。食物繊維、ケルセチン、GI値( GI値についての知識は http://www.otsuka.co.jp/soy/gi.html 参照)などからアンチエイジング医学でも再度注目されている。しかし健康食材としてなかなか認められないのは、大きい事、甘すぎることではないだろうか。

糖度にばらつきがあるのだから、エネルギー量だって違って当然。しかしそのあたりの議論はつくされていない。果物は健康にいい、という説と、糖質が多いから控えるように・・・が曖昧なままにふらふら・うろうろしている。

 

たとえば300gのリンゴ(芯をぬけば250gくらい)で140Kcal はかなりボリュームがある割りにはエネルギー量が少ない。しかも低GI食品。ドーナッツ1個が200Kcalくらいだから、カロリーだって高いわけではない。


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そしてかんきつ類。最近はとにかく品種が多く、しかも輸入ものも加わってどれが美味しいか品種では答えられない。同じ産地でもやはり品質は価格に正直に現れる。

 

かんきつ類は疫学調査でも健康維持食材の評価が高い。さわやかなアロマで加齢臭にもサヨウナラ。

 

最近出回っている晩白柚(ばんぺいゆ)。一度はお試しあれ。


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なぜ消費が低迷するのか・・・選択肢が多すぎるのかも。

高校生の頃からプロポーズすることもなく、かといって別れるでもなく、ずるずる、だらだら付き合っている男女関係に共通事項あり・・・・まぁ聞き流して・・・。

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寒じめほうれん草レストラン編~そして次は日本のみかん文化の再創造がはじまる予感

2010年1月23日 21:08

マスターソムリエ高野豊氏のワインの会。農系ソムリエと言われ、農産物一般にも詳しい方と聞く。長野のワインを世界レベルまで引き上げた立役者でもあるという。

 

 

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寒じめほうれん草は当初、メニューの予定になかった。
 

 

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旬の寒じめほうれん草を紹介したく、あらかじめサンプルを送り品質を納得していただいた上で「参加」させていただくことになった。寒じめほうれん草トーク。説明がなければただのほうれん草で終わってしまう・・・しゃべらない野菜に替わってお話しするのが野菜ソムリエ。ワインとの決定的な違いは「野菜にアルコールの薬効成分が無いので酔わせるテクニックが限られている事」

 

 

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ぎざぎざの葉っぱで根っこが赤い、昔のほうれん草は本当に美味しかったですね。

意外と多くの方が頷いてくださった。

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さてメニュー。寒じめほうれん草は肉の下じきになっているが、うまく下ごしらえしてあり本来の風味をそのままに添えられていた。見た目の存在感がなかったので、野菜ソムリエとして参加してよかった・・・。押し売りも野菜ソムリエの姿なら怖くない。

 

 

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お隣の席に和歌山県有田市の望月市長。「400年の日本最古の歴史を持つみかん文化で市の未来に道筋をつける」とのマニュフェストを掲げ、当時日本最年少で市長に当選。お会いするのは今回2回目。「世界に認められている日本食、その付随する文化で地域を再創造し、日本を観光立国に」と願うベジタブルフォーキャスターと思いがシンクロしたかもしれない。まぁ、しこたまワインを飲んでいたので、気持ちがかなり大きくなってはいたが・・。これも高野氏の「しかけ」と自然に受け入れて、次の展開を待つことに。

 

ちなみに写真のみかん、規格でいえば中のやや上のランクとの事だが、皮がするりとむけて、じょうのう(ふくろ)が薄く、果肉がジューシー。今年も温州みかんを沢山頂いているが、この口当たりがアドバンテージだと思う。かんきつ類は美容・健康にお勧め。みかんをかばんにポンとほうりこんで、リフレッシュ!とほおばるのも粋な暮らし方だと思う。

しかし、こんなに美味しい果物なのになぜ?消費が低迷しているのか・・・・・。

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縮んだほうれんそうは美味しくなかったですよ。寒じめほうれん草のことですか?・・・そう言われても困惑。

2010年1月22日 22:00

冬期に出回るほうれん草のパッケージに記載されているタイトルはバリエーションが豊富。縮みほうれん草、寒じめほうれん草、ほうれん草、そして「まほろば」とか「赤根ほうれん草」といったネーミングが付いている。

 

もともと日本のほうれん草の主軸は「東洋種」、その後、強くて収量の多い西洋種と掛け合わせになってF1品種が登場。さらに品種間の交配が複雑にからまり、周年栽培の技術も標準化され、ほうれん草の味も平坦化。ポパイのほうれん草は西洋種で、缶詰とかバター焼きにあうが、東洋種は「おひたし」などのシンプルな料理にあう。

 

見た目で判断する基準は葉っぱがぎざぎざ、根っこが赤色は東洋種の系統と考えていいだろう。

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ほうれん草はどんな品種でも寒さにあたれば縮む。そしてうまさを増す。ただし外見、収量を考慮すれば品種改良されたものが優位にたつ。東洋種のほうれん草は生育は弱いが、美味しい。よって美味しさをとことん追求すれば、品種改良されていないほうれん草を寒締めすれば良い。逆に収量を重視すれば寒さにあてなくても縮こまる品種をあたたかい地域で沢山・早く育てればよい。
11月下旬の暖かい時期に、形も味も中途半端なほうれん草が「寒じめほうれん草」の名でスーパーに出回っていた。少し前から「最近の寒じめほうれん草は美味しくない」という生活者からの意見が上がっていた。産地に報告だけはしておいた。

 

産地での試行錯誤が続く

 

それでもスーパーへの陳列は続いたが、12月に入った頃から少し味がのってきて、そして1月中旬の今、やっと真に寒じめされたほうれん草が出荷されている。

 

「寒じめほうれん草」の定義を今一度繰りかえす。栽培技術である。ハウスである程度大きく成長させたあとに寒気にさらす。大切な事は地温の低下が持続すること。大胆な言い方をすれば、品種にかかわらず寒じめすれば美味しさが増す。

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寒い地域ならではの栽培技術

 

ところが寒じめ栽培技術を用いなくても「縮れている姿を持つように品種改良されたほうれん草」も一緒に市場に出回る。それが美味しかったり、美味しくなかったり、スーパーのPOPも寒じめほうれん草と記載していながら、パッケージはちぢみほうれん草となっていたり・・・。


目に付く順序に食べてみる

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まほろば:赤い根っこ、葉っぱがぎざぎざで東洋種の系統色が強い。1パックに9-10株入り。いろいろな味が交差して昔懐かしい大人のほうれん草味。わずかに繊維質が残るけれど、むしろかみ締めることで味わいが出る。

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寒じめほうれん草:葉っぱが大きくて葉脈のところで縮れもしっかり。比較的、茎が長い。1パックに3株入り。柔らかく全般に濃厚な味だがすっきりしている。子供たちが好きになるはず。

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ちぢみほうれん草:1パックに2株入り。葉っぱ、茎とも多い。収量、外見重視のほうれん草という感じは否めない。茎の部分だけ美味しかったが、葉っぱは味がうすい。

 

 

 

ほうれん草の昔の味を知っている方にとっては、ほうれん草の食味は関心が高いと聞く。

味重視の野菜の世界がひろがってほしい。

 

品種はなんであれ寒じめ栽培技術で食味が向上するならば、この時期に正しく寒じめされたほうれん草を頂いて、かつての品種改良されていないほうれん草の味に思いをはせるのも悪くない。

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寒じめほうれん草が旬を迎え、とても美味しく仕上がっています。

2010年1月18日 10:44

ほうれん草は健康野菜、パワー野菜。

ポパイがほうれん草の缶詰をぱくっと食べると、彼のアンバランスな太さの腕の筋肉にはてかりマークが入った。危機一髪のオリーブはポパイに今日も助けられる。

 

前腕が妙に太いのは、ロープを手繰り寄せるセーラーマンの職業が繁栄されているのだ。

 

ほうれん草の旬はいつか?年中ある野菜だから意外と知られていない。少なくても暑い時期の作物ではない。ほうれん草を購入する理由は、健康にいいから、とか安くて購入しやすいといった理由がほとんど。美味しいほうれん草の味を知っている人は少ない。

栄養大学の偉い先生が、種を自家採取し品種改良されていないほうれん草を偶然田舎で食べて、本当のほうれん草の味を思い出した、と語っていた。

 

経験上、健康にいいから、という理由だけで野菜を選んでいると、美味しい野菜にはめぐり会う確立は低い。

 

岩手県は冷涼な気候、夏季ほうれん草の生産地でもある。冬季の農作物生産は限られていて、冬の産直に行くと、大根とか白菜、ねぎ程度しか置いていない。輸入物のドライ・フルーツが陳列されているとますます寒くなる。

 

そんな岩手県の東北農業研究センターで寒じめほうれん草は生まれた。品種ではなく栽培技術。ハウスの中である程度の丈まで成長させ、その後寒気にさらす。寒さを感じたほうれん草は、自分を守るために葉っぱを地面につけ、そして縮ぢれる。匍匐前進、そんな言葉があてはまる。そして水分を体外に出し、内部には糖やビタミンCを蓄積し始める。芯の部分が赤くなるのは、ファイト!の証のアントシアニンである。

 

 

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寒じめほうれん草は甘い。基準は糖度「8」だが、10を越す事がある事実からもかなり甘い。甘さが美味しい野菜を規定するわけではないが、もともと糖質が多い野菜は別として、栽培法の変化で糖質が増す野菜は甘さ以外の美味しさを兼ね備えていることが多い。水を抑えたり、じっくり寒さのなかで育った野菜は美味しい。

 

逆に甘やかして、肥料や水や気温や太陽をたっぷり与えた野菜は大味で美味しくない。人にもある意味同じことが言える。

 

その寒じめほうれん草、根っこにセンサーがあるらしい。地温がマイナスになると「よっしゃー」と体内に糖分やビタミンCを蓄えるのだ。写真のごとく雑草は枯れてもほうれん草は青々としている。強い!逞しい!素敵!

 

 

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そんな寒じめほうれん草にほれ込んだのが生産者の川平さん。好きだから栽培している、美味しいからもっといいほうれん草を作りたい、熱意を語る。もと漁師さんだけあって根性の質がカラットしているのだ。えーい、自然相手の農業。あたりはずれあって当然!でも今年はまだちょっとの所だなぁ、男らしい。寒じめのイメージにぴったりだ。

 

 

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食べてみろぉ、と差し出された葉っぱはえぐみの無いすっきりした甘さ。

舐めてみろぉ、の根っこの切りくちからは糖質たっぷりの汁がにじみ出ていた。

 

 

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その美味しさは科学的に検証したばかりだ。

味香り戦略研究所に分析を依頼する。美味しさは糖質(Brix)、苦味、旨み、先味、後味で比較する。味香り研究所は独自に開発されたセンサーを利用、センサーの膜を通過して味の情報を電気信号に変える。客観的かつ公平な味の判断。もちろん美味しさには視覚、嗅覚、環境なども影響されるが、そういった主観が入らないこともデータ分析に信頼性がます。

 

ほうれん草の「美味しい」は糖度と旨み、そしてほんのりクリアな苦味。下記の座標軸となっている。

 

 

寒じめほうれん草グラフ


美味しさ座標軸右上にプロットされているのは岩手久慈産の寒じめほうれんそう。他県のほうれん草とは比較にならないほどのハイレベルの美味しさなのだ。しかも分析時期はまだ完全に寒じめがされていない時期だったが・・・ということは今の時期・・・・。スケール・アウトかもしれない。

 

ここが「嫌い」のひとつに「えぐみ」がある。下記のグラフでは苦味雑感/食に反映されているが、寒じめほうれん草はかなり少ない事がわかる。子供が美味しいと言うのも納得がいく。寒じめ技術でシュウ酸が少なくなるという報告はあったが、なぜ「えぐみ」が少なくなるかは、まだ一定の見解が得られていない。

 

 

寒じめほうれん草レーダーチャート①


同じ品目でも品種、技術、地域などでさまざまに変化する農産物。

 

「美味しい野菜はどこで売っていますか?」とよく聞かれる。答えるのは難しい。

少なくても外見重視の流通形態では、自ら追求しない限り、美味しい野菜にめぐり会う機会は少ないようだ

 

「先日縮んだ形のほうれん草を料理しましたが、特別美味しくなかったですよ」・・・そう言われてはっと気づくことがあった。・・・・・次回。

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